精神の崩壊
仲間の死
 捜査員達は、仲間の凄惨な死に涙を浮かべ、また今度は自分達がそう為るのではと、怯えていた。

 未だこれと言った証拠物証無し、目撃者無し、お手上げの状況が続く。

 阿部は、一人でいったい何をしていたのだろうか、それすらも解らない。

 せめてそれだけでも解れば。

 そう思い、捜査員達は嘆いていた。

 「なんとしても犯人を捕まえるぞ」
 「このまま、野放しにして堪るか」

 捜査員達の、怒りの声が上がる。

 「現場百回だ」
 「最初の現場から検証し直しだ……」

 そう言って、捜査員達は現場へと向かって行った。

 一カ所一カ所、再び現場を回り調べ直す。 

 犯人は、警察の捜査の網の目を潜る様にして事件を起こしている。

 毎日多くの捜査員が、街を見回っているにも関わらず、目撃もされずに犯行を犯す等可能なのだろうか。

 また、女一人で人を掠い、重い遺体を運び、木から吊す等出来るのだろうか。

 それはまず無理だろう。

 犯人に、協力している者が居る筈だ。

 しかも、捜査状況を知っている者。

 即ち、自分達の仲間に……。

 捜査員の数人がそう感じ出した。

 しかし、それが誰か解らない為、口にする事は出来ない。
< 51 / 112 >

この作品をシェア

pagetop