精神の崩壊
 それぞれがそれぞれを疑いだし、それが原因で気付かぬ中にチームワークは乱れて行った。

 皆、表向きでは仲間の顔をし付き合ってはいるが、心の中ではもしやこいつが……、と言う疑いの心が飛び交っている。

 仲間のちょっとした行動も怪しく思えてくる。

 仲間が、陰で家族や友人と電話しているだけでも、一瞬もしや……と言う考えが浮かんでしまうのだ。

 そう思うのは、私だけではないだろう。

 当然私も、誰かにそう思われているはずだ。

 そんな中、事件は起こった。

 階段の方から、言い争う声が聞こえて来る。

 「お前、こそこそ何してる」
 「友達に電話してただけだ」
 「嘘をつけーっ、お前……」
 「何だ、何が言いたい」
 「お前の方こそ、さっき何してたんだ」

 2人は、今にも掴み合わんばかりに口論している。

 それに気付いた仲間達が、2人を止めに入る。

 行き詰まった捜査のせいで、仲間達のイライラはピークに達していた。

 そんな中、事件は起こってしまった。

 この事件の担当責任者を任されていた、柳瀬哲夫が自宅アパートで、首を吊り死んでいたのだ。

 キッチンのテーブルの上には遺書があり、捜査に行き詰まった事による苦悩等が綴られていたそうだ。
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