精神の崩壊
あの時の少女
 正春は、あの日あの男を殺してからずっと考えていた。

 いったい、あの時の少女はどう為ったのだろうか。

 死んでしまったのだろうか。

 もしそうなら、自分は2人人を殺した事に為る。

 そう思い、正春は今更ながら深い後悔の念と、罪悪感に打ちひしがれていた。

 どうして自分はあの時逃げてしまったのだろうか。

逃げずにやるべき事をやっておけば、あの男にあんな写真で脅される事もなく、殺す必要もなかったのに。

 そう思った時、正春はちょっとした違和感を感じた。

 写真……。

 そう言えば、あの写真はアングルが少し変だった。

 可なりの低姿勢で撮られた様なアングル……。

 あのアングルなら、可なりの近距離でなければ撮れない筈。

 あの時は、昼間、まだ明るい時だった。

 いくら酒を飲んでいたとは言え、そんなに近くに居れば、嫌でも気付いた筈だ。

 そう言えばあの時、少女の近くにはカメラが落ちていた様な気がする。

 もしかしてあの写真は……。

 そして、この事件はあの時の事故に関係しているのではないだろうか。

 そう思った時、正春の身体に寒気が走った。
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