精神の崩壊
後悔
 事件が発覚して間もなくした頃から、そのニュースは報じられていた。

 「次のニュースをお伝えします……行方不明に鳴っていた、高橋智喜君、桃川邦男君、柳田香苗ちゃん、渋田緑ちゃん、野見山里奈ちゃんの5人の遺体が駒井製作所の……」

 そのニュースを見て、正春は遂に子供達の命迄もが残酷極まりない奪われ方をしたのを知り涙していた。

 「どうしてこんな事に……」
 「子供達に迄こんな……」

 正春の目から涙が溢れ出し、床へポタポタと落ちる。

 そんな正春を見て、千春が何も言わず、そっとタオルを差し出す。

 そんな千春の優しさに触れ、余計に涙が出て来る。

 千春だって辛い筈だ。

 泣きたい筈だ。

 なのに千春は……。

 正春は、自分の不甲斐なさ、愚かさに更に涙が溢れ出る。

 自分はあの時……何故逃げ出したのだろうか…………。

 あの時、逃げ出してさえいなければ……。

 また、何故あの男を殺してしまったのだろうか……。

 千春さえ居てくれれば……。

 名誉なんか……。

 お金なんか……。

 いらないじゃないか……。

 今更ながら深い後悔の念が、正春に津波の様に押し寄せて来る。

 しかし………もう後へは引けない……。
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