精神の崩壊
 人を殺してしまった以上、もうどうする事も出来ない。

 私は、親も兄弟も居ない孤独な身……。

 千秋もあれだ……。

 私が捕まってしまえば、千春はどうなる……。

 捕まる訳には行かない……。

 私には、千春しか居ない様に千春にも私しか居ないのだ。

 これは、一生涯隠し通さなければ為らない過ち。

 そう思い、正春は覚悟を決めた。

 しかし、正春はどうしてもあの時の少女の事が気になってしかたなかった。

 せめて……安否だけでも知りたい……。

 そして、正春はあの事故の事を調べる事にした。

 その結果、あの時の少女は、脳挫傷で亡くなってしまった事を知った。

 少女の名前は、草野愛子。

 当時12歳だったそうだ。

 私は、2人も人を殺してしまった。

 そう思い、罪の意識に苛まれる中、電話が掛かって来た。

 ピルルルルルッ……ピルルルルルッ……

 「はい、真田ですが」
 〈お久しぶりね……〉
 〈ま・さ・は・る〉
 〈あなたの声が……〉
 〈聴きたかったの……ウフッ〉

 それは、あの女からだった。

 〈ウフフッ……嬉しい……〉
 〈大好きな……〉
 〈貴方の声が聞けて……〉
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