精神の崩壊
 女は、正春を見下ろしニヤニヤとしながら言う。

 〈此処には何でもあるわ〉
 〈お風呂、トイレ、寝室〉
 〈そしてアトリエ……〉
 〈他に必要な物があれば揃えるわ〉
 〈貴方は、これから此処で私の為だけに絵を描くのよ〉

 女は、不気味な笑みを浮かべ正春と千春を見ている。

 「何であんたの為に描かなければいけないんだ!?」

 正春がそう言うと女は。

 〈娘さんがどうなっても良いのかしら?〉

 そう言って千春の方へ歩いて行き、千春の頭を踏み付けた。

 千春は我慢して堪えている。

 〈何なら、此処で殺しても良いのよ……〉
 〈私は、貴方さえ居れば良いんだから……〉

 女はそう言って、ポケットからナイフを取り出した。

 「……解った……」
 「解ったから……娘には手を出さないでくれ……」

 正春は、女にそう言った。

 〈解れば良いのよ、それじゃぁよろしくね〉

 女は、そう言ってナイフを一本床に置き部屋を出て行き、ドアの鍵を掛けた。

 入口の壁とドアは透明のアクリルで出来て居いる様で、向こうからまる見えに為っている。

 そして女は言った。

 〈さぁ、ナイフを拾ってロープを切るのよ〉
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