精神の崩壊
 正春は、ナイフの方へ芋虫の様にズルズルと這って行き、後手にナイフを拾い上げた。

 そして、千春の方へ這って行き、後手で千春の手を傷付けない様に慎重にロープを切っていく。

 「千春、絶対動くなよ!!」
 「うん……」

 ジョリッジョリッ………
 ……ジョリジョリッ……ブッン…

 正春は、何とかロープを切る事に成功した。

 そして今度は、千春にナイフを渡しロープを切って貰う。

 正春達は、何とかロープを切り外し抱きしめ合った。

 そして、正春はドアの方でこちらの様子を見ている女の方へ歩いて行った。

 壁は分厚いアクリルで出来ていて、無数の小さな穴がほげている。

 そして、その下には引き出しが付いていて向こう側へと繋がっている。

 まるで、羊達の沈黙のレスター博士の牢獄を思わせるかの様な造りだ。

 〈さぁ、そのナイフを引き出しに入れて〉
 「解った……」

 正春は、そう言ってナイフを引き出しに入れた。

 ガラガラッ…………

 女が引き出しを引きナイフを取り出して言った。

 〈貴方は、此処で毎日私の為に絵を描くのよ……〉
 〈今日からこの引き出しが、私と貴方の運命の引き出しに為るのよ〉
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