デュラハン
 竜二は痛みに堪えながら、よろよろと走り続けている。

 パッカパッカパッカ………

 キリキリキリッ…………

 後ろから迫り来る馬の足音、そして弓を引く音……無言の恐怖が竜二を呑み込んで行く。

 「ひっ、ひいーーーっ」

 …シュッ……ドスッ……

 「ゔっ……ゔぅっ……」

 竜二は眼に涙を浮かばせ、鼻を垂らし、口元から赤い筋を這わせながら恐怖に引き攣り怯えた情けない顔をし、今にもその場に倒れ込みそうな程によろよろと、又走っているのか歩いているのかさえ解らない速度で竜二は生への執念を燃やし懸命に逃げようとしている。

 〈そうだ、その調子だ〉
 〈そうでなければ狩りは面白くない〉
 〈フハハハハッ……ヌハハハハッ〉
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