吸血鬼は恋をした。
「…う、ぁっ…」

マリは目眩に耐え切れず、意識を手放した。
ディオは床に膝つく瞬間、マリの腰抱きかかえてベッドに寝かす。

吸血鬼の唾液には止血効果があるのか、マリの首筋には牙を突き刺した痕は残っていても、血が留めなく出る様子はなかった。

マリの血を吸ったディオは…というと、口許についた鮮血を舌や指で舐めとり、ようやく意識を保て出したようだ。

「…ハァ…悪いことをしてしまった…」

いつもならあんな、がっつくようなことはしないのに…

ディオは考える。
これまで飲んだ血に、これ以上美味しい血があっただろうか?
……と。

「腹が減っていただけか?……しかし…あの味は…」

眠ってしまったマリを見て、ディオは小さく呟いた。





――――
数時間後、マリは目を覚ます。

「んっ…ふぁあ…」

目に入ったのは、数時間前と同じ天井…枕元にある時計を見ようと、顔を横に動かした時だった。

――ズキンッ

「痛っ…ぇ?痛い?私、何してたっけ…」

マリは…鈍い痛みを感じた首筋に手をやる。
そして数時間前の出来事を思い出した。

「そうだ…っ!ディオ、さんっ!!」

やっと思い出したのか、飛び起きるかのように腰浮かせ、ディオの名前を叫ぶ。


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