吸血鬼は恋をした。
―――――
「また、なんだ…」
机の上に置かれた手紙を見て、少女はため息をついた。
《 マリへ
ママは仕事の都合で、またしばらく帰れなくなります。
ホントにゴメンね(>人<)
買い物は今度帰った時に一緒に行こう♪
マリに似合う服を見つけたの(*´∪`)!
この仕事が終わったら、だいぶ落ち着くはずだから。
ママより 》
「ママ、相変わらず若いんだから…顔文字なんて使っちゃって…」
苦笑いするしかなかった。
母の突然の仕事、一人ぼっちの夕飯。
少女はもう、ソレに慣れてしまった。
少女の名前は
天音(アマネ)マリ。
女子高生だ。
幼い頃に父親が死んで、母親は仕事三昧。
兄弟も居ない。
友達には恵まれていたが、やはり周りと比べるとマリは一人の時間が多かった。
だが…そんな生活の中でも分かる『母は自分を愛してくれている』と。
信じられるものがあるからこそ頑張れるマリがいた。
その一人という生活に、悲しい現実に慣れてゆくマリがいたのだ。
…けれど、やはりまだ子供。
完全に現実を打破した訳では無いマリの心の中には
『サミシイ』
この気持ちが、いつも居座っていた。
―――――
時刻は22時。
「さぁ…寝ようかな」
マリは自分の部屋の電気を消そうとする。
その時―
ドッガーンッ!!!
「ひゃっ!?」
突然聞こえた雷鳴。
そして、雷独特の光…イナズマがマリの目に入ってきた。
「か、雷だ…そういえば今日の夕方から雨が降ってた………ってドシャブリッ!!」
窓から見える景色を見て、マリは確信する。
「今夜は嵐だなぁ…」
窓を開けると大量の雨と風が吹き、雷は鳴り…とてもではないが1分ですら窓を開けておける状態ではなかった。
空は荒れ狂い、これから起こる『ナニカ』を知らせているような…そんな気配だった。