隣人の狂気
「どうしたの?見つからない?別になくてもいいよ。俺うまくやるから」

「そう?じゃあ頑張って『うまく』してね。フフッ」

思わず笑みが零れる。

いまだ背を向けているワタシに後ろから近寄って来る彼の足音が。

マズい。

あんまりここに近いと裸になった意味がないじゃない。

まあいいや。私こそ『うまく』やろう。

背中で彼の気配を感じつつタイミングをはかって…

今だ!

ナイフの柄を両手で握って刃先を追うように体を半回転させた。

狙い違わすそこには彼の横っ腹があり、刃先は根元まで彼の体につきたった!

その勢いを殺さないように力を込めると、ナイフは内側から彼の体を切り裂いて再び表に出てきた。

ナイフからはその軌跡を追うように血糊が飛び散って宙に弧を描く。

ほぼ一瞬の出来事だった。
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