隣人の狂気
「なんだよ俺いきなり刺されるような事言ってないだろ。

第一ここじゃあエッチだってかなり後ろめたいハズだってのに…」

へたり込んだままの彼を見下して続く奇妙な会話。

二人とも真っ裸で男は脇腹から内臓を溢れさせ、女は血塗れのナイフを弄んでいる。

「誘ってみせたのは実用性を兼ねたタダの前振りよ。返り血で洋服を汚したくなかったの」

ワタシの何気ない言葉に彼はあ然としてしまった。

「じゃあ最初から刺すつもりだったのかよっ」

「ちょっと違うわね。話してる途中で殺すつもりになったのよ」

「なんでだっ」

さっき彼が見ていた、多分お父さんの死体発見現場の辺りをチラリと見て応えた。

「それはそれはとてもイケナイ事だからよ」

心からの満面の笑みが思わず零れた。
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