隣人の狂気
隣人の狂気




ある地方都市の夜の繁華街を通り過ぎた、静かなビル街の一角に一組の男女がいた。

薄汚れた双子のようにそっくりなテナントビルの合間の暗がりで身を寄せ合って話している。

それはまるで酔っ払ったカップルが人目を避けてイチャついているように見えた。

実際その二人はまともな会話をするのは初めてなのだがとても打ち解けた雰囲気でいる。

しかし会話の内容は殺伐とした物だった。

「それでね『ワタシ血の雨を浴びてみたかったの』って言って彼の髪を掴んで持ち上げて、そのまま頸動脈を切り裂いたの」

女の口調は友人との他愛ない会話並みにくつろいだ物だったし、聞いている男も驚いたりはしなかった。

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