隣人の狂気
駐車場から海岸へ出るにはテトラポットの切れ目を通るのが自然で、それは俺のすぐ脇を通る事になる。

俺はすでに彼から視線を外し海を眺めるフリをしていたが、意識はもちろん彼の方へ向いていた。

足音に振り返るとマトモに目が合ったので、つい会釈をした。

彼はスラッとした長身でよく陽に焼けており、歳は多分30過ぎぐらいだろうか。

胡散臭さそうに俺に会釈を返したが、顔を上げた時軽く目を見開いた。

そして通り過ぎかかっていたのを引き返して、俺へ声をかけてきた。

「お前ヒデー顔色だけど大丈夫か?
パッと見、今すぐにブッ倒れそうだぞ」

ビクッとなった。

すぐにテトラポットから降りていた。

皮肉にも彼に声をかけられた事で動けるようになってしまった。

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