隣人の狂気

時効とは

見るともなしにテレビを眺めつつ回想に耽っていたら、タバコが残り少なくなってきた。

灰皿では吸い殻が山盛りになっている。

天井を見るとタバコの煙がたゆたっていて、まるで遠景のように霞がかっていた。

無意識に吸いまくっていたらしい。

煙突か俺は。

タバコの買い置きがないので、しかたなくまた外出することにした。

車に乗りながら想う。

あの苦痛と理不尽な暴力に対する抗議に満ちた悲鳴を聞いてから十四年と数ヶ月。

あと半年ほどで俺の時効は成立するハズだ。

彼の家族は今、何を想い日々を送っているのだろう。

カレンダーの時効成立日を、恨めしげに憎しげに睨んでいるのだろうか。

そうだといい。

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