隣人の狂気
やり抜くと決めた瞬間に自分でも意外だったが、心が冷えていくのを感じた。

腹をくくったのとはちょっと違う。

ココロの芯が醒めて冷たく硬く、もし触れられたのなら指先から凍りつくような無慈悲な塊になった気がした。

彼の胸ぐらを掴んで少し引き上げる。

彼は無抵抗にされるがままで、眼球だけが問うように俺を見返した。

「はじめまして。今からアナタを殺します」

俺が宣言すると彼は目を見開いた後、弱々しく俺の腕を振り払おうともがいた。

素直に手を離すと腹這いになり、両手と折れてない左足で這って逃げ始めた。

スゴいなと冷たく虚ろに思った。

彼は生を諦めず死に抵抗している。

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