隣人の狂気
左足で彼を踏みつけた状態で、右足はかかとを下に向けたまま思い切り股を上げる。

そしてかかとを彼の首の後ろに叩きつけた。

無慈悲に全力で。

冷酷に何度も。

堅く連結した何かを無理やり砕き外したような感触が靴底を通して伝わってきた。

(死んだ…のか?)

彼は糸の切れたマリオネットのように、手足を広げてうつ伏せに寝転がっていてピクリとも動かない。

腹の辺りにつま先をかけて仰向けにひっくり返す。

唇や見開いた目の中にまで砂が付いているが完全に無反応。

呼吸もしていない。

死んだ。

たった今、一人の男性が俺に殺されて息を引き取った。

雨が少し強くなってきたようだ。

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