隣人の狂気
相変わらずキョロキョロしながら路地の奥の方へ歩いて行く彼女。

表道りはともかく裏通りは俺も詳しくはないので彼女がどこを目指しているのか見当もつかない。

だが偶然にも俺に都合のいい状況になってきた。

鮮やかなネオンや雑踏で賑わう表道り界隈からさほど離れていないのに驚くほど人気がない。

かと言って静まり返っている訳でもなく、遠くから喧騒や車が行き交う音が届いて来る。

目立たずに事を済ませ速やかに人ごみに紛れるのにうってつけの場所だ。

ここで決行する事に決め歩調を速めた。
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