隣人の狂気
歩きながら彼女は持っていたハンドバックを開けて手を突っ込んだ。

鍵でも探しているのだろう。

なかなか鍵が手につかないらしく、そのままのポーズで隙間に踏み込んで行く。

追いかける俺も足音を消しもせず、まっすぐ隙間を目指した。

隙間に踏み込んで数歩の所で彼女は不意に振り返った。

そして自分に向かって来る男の存在に驚く事もなく、マトモに目を合わせてきた。

俺の方がたじろいでしまった。

彼女は先ほどの俺と通じる冷たい笑みを浮かべていた。

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