愛してるの言葉だけで。


周りに人が集まっていることにも気づかず、ひたすらゆう兄が起きるのを期待していた。



「ゆう兄!起きて…」



早く起きないとダメだよぉ…

こんなところで寝ちゃうと風邪ひいちゃうんだよ?



「早く救急車よべ!!」

「可哀想に…」

「兄弟かなにかかしら」

「事故?」



みんな人ごとみたいに口々言うだけ。

それでも、夏希の耳には届いていない。


夏希の耳に、音らしい音はいっさい届いていなかった。


ただ、ゆう兄が起きて笑うことを信じて待っていたんだ。
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