愛してるの言葉だけで。


「お嬢ちゃん!」



その時、一人のおばさんが夏希の体をゆう兄から離そうとした。


…嫌だ!



「離して!」



ゆう兄はまだ起きてない!

見捨てちゃダメ!



「離して!!」


「見ちゃダメ!」



そのおばさんはそう言って夏希を抱き締めて視界を真っ暗にした。


見ちゃダメ…?

もう何分も見てたよ。



真っ赤な血で染まったゆう兄の姿を…──



夏希はおばさんの胸の中で大声で泣いた。



「うわぁー」



かっこいい、ゆう兄が死んじゃう…

優しい、ゆう兄が死んじゃう…

大好きな、ゆう兄が死んじゃう…


そんなの嫌だ。

嫌だよ!
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