愛してるの言葉だけで。


──ガチャ…


「母さん、夏希どこにも…」



その時、お父さんが玄関から現れた。

もしかして、私を探しに行ってた……?



「あなた…夏希が……夏希がゆうくんのこと思い出したんですって」


「本当か!?」



私は深くうなずいた。


すると、お父さんは玄関にそのまま脱力して座り込んだ。


こんなに二人を悩ませてしまって、

こんなに二人を追い込んでたんだね私…



「ごめんね…でも、ちゃんと思い出したから……私…っ」



たまらなく私の涙もポロポロと流れた。


今まで涙なんか流さなかったお父さんまでもが泣いていた。


この夜はずっと三人で泣いていた。
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