愛してるの言葉だけで。


今、教室で勉強をしていないのは私と千尋ちゃんと新井くんだけ。


みんな勉強に励んでいた。


きっと、いや絶対、みんな夏休みに補習なんて嫌なんだ。


私も絶対に嫌だ。



「どうしよ…」


「もしかして、勉強してない?」



千尋ちゃんの問いに黙ってうなずく私。


相当な精神的ダメージを受けた私は倒れるように椅子に座った。


千尋ちゃんは学年トップ5に入る天才的な頭脳の持ち主。


だから余裕なのだろう。


新井くんは……きっと、諦めているんだ。


私は……テストのことなんてすっかり忘れてしまっていた。


無神経な蝉の鳴き声と鉛筆の滑る音とみんなの心の叫び声が耳につくほど聞こえてくる。
< 154 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop