愛してるの言葉だけで。
「ゆ…幸信?」
「うん。そうだよ」
恐る恐る聞いた私に、優しい声で答えてくれた幸信。
幸信の低くて落ち着いた声は私の耳にちゃんと届いた。
頭に響くような声じゃなく、私の耳に……
私はゆっくりと一歩ずつ幸信に近づいた。
二人の距離が近づいた時、なぜか少し懐かしさを感じた。
そして、私は幸信の顔に手を伸ばした。
けれど私の手は空中を泳いだ。
私の手に幸信の体温は感じられなかった。