愛してるの言葉だけで。
「夏希、やらなくていいの?」
私の隣に立っている幸信が声をかけてくる。
でも……
「友達つくるチャンスだと思うけど?」
友達つくるチャンス…
もちろん、この幸信の声が聞こえているのは私だけ。
みんながいるから返事はできない。
幸信は、朝起きた時も授業中も帰りも眠る時も私の隣にいてくれる。
不思議だけど慣れてしまった。
時々、いないこともあるけど……
「夏希、頑張れ!大丈夫、お前ならやれるから…勇気だして挙手してみ?」
私は目をギュッと瞑って、震える手をゆっくりと上に向かって上げた。
私なら…
できるんだよね?
「坂井さん!ありがとうございます!ピアノ伴奏ですよね?」
「はい…」
委員長…喜んでる。
良かった。
みんなも拍手してくれたし。
初めて知った。
『勇気』って一瞬なんだね。