愛してるの言葉だけで。



「…うっそ!?」



私は驚きのあまり、自分でもびっくりするくらい大きな声を出してしまった。


手のひらを口に当て、周りを見渡した。



「夏希ちゃん声が大きい…」



そう人差し指を口の前で立てながら言ったのは、聖也くんだった。


だって…

聖也くんが悪いんじゃん。



──俺、リズム感全然ないんだ…



なんて言い出すから…


なら、どうして指揮者なんかに立候補したんだ…


と、聖也くんに心の中でツッコミを入れて私はため息をもらした。



「…特訓する?」


「うん!するする!」



聖也くんは大きく相づちをうった。


そして、みんなには秘密で聖也くんの指揮の特訓が始まったのだった。


聖也くんは変にプライドが高くて、みんなにリズム感がないことを知られたくないらしい。



まあ、分からないこともないけど…



< 59 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop