愛してるの言葉だけで。




そして、昼休みになった。


聖也くんを特訓することになっている私は、お弁当を持って音楽室に行こうとした。


その時…



「夏希ちゃん、お弁当一緒に食べよっ」


「…未央ちゃん。ごめん、ちょっと約束があって行かないといけないところが…ほんとごめんね!?」



お昼を誘ってくれた未央ちゃんに背を向けて急いで教室を出た。


絶対、未央ちゃん変に思ったよね!?


もう、聖也くんのせいだからね!


せっかく誘ってくれたのに…
ほんと、ごめんね!未央ちゃん!!



「お前は本当にお人好しすぎ」



もちろん、この声は幸信の声。

その声に私は返事をしない…できない。


いいかげん嫌になってくる……


幸信を無視しているみたいで、罪悪感が襲ってくるんだ。



本当は、

無視なんかしたくない。

幸信ともっと話したいよ。


そんなちっぽけなことも許されないの?


幸信、生き返ってよ…


そんな子供染みた、叶いもしない願いを本気で叶えて欲しいと思っている私は幼稚だろうか……



私は痛む胸を抱えながら音楽室に入った。


< 60 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop