Garden4
背中
少し前を並んで歩く背中を見つめる。
丸まった背中を、微妙に左右に揺らしながら歩く、その姿は二人、悲しいくらいによく似ていた。
さよなら。
言おうとしてやめた。
言ったら二度と、会えない気がした。
「元気で…」
差し出された手は、乾いてて、暖かかった。
頷くと、心には冷たい風が吹いた。
あたしの顔を覗き込む瞳は、淋しさに潤んでいた。
きっと、あたしも今、それと悲しいぐらいによく似た顔をしてるだろう。
「おとうさん…」
それ以上は、言葉にならないあたしの肩を、母が優しく抱いた。
並んで歩く二人の背中は、もう見ることはないだろう。
振り返らない背中を、遠くなるまで見送った…