愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

振り返ればそこにいてくれる香椎くんの存在が、私の中で日ごとに増していくのが分かる。


岳尚様はそんな存在に今後なるつもりがあるのだろうか?


いや、きっとあるわけがない。


言われるままに扉の奥へと入って、私はすでにそこにいた人物を見つけて「あぁっっ!!」と大声を出しそうになった。


勿論、出す寸前に香椎くんの大きな手が私の口をやんわりと塞いだんだけどもね。


「これはどういうことですか?」


質問したのは香椎くんだった。


「なにか問題でも御有りかな?」


しれっとした顔で答えたのは岳尚様だった。

香椎くんはそんな岳尚様を睨んだ後、そこにいる人物ににこやかに声を掛けた。


「あなたがダブルデートの付き添いになるなんて。

やはり『友達』思いですよね」


刺さるなぁと。
明らかに敵意がくみ取れるその言い方に、私は小さなため息をこぼしそうになった。


だって目の前の彼女はなんだかとてもバツが悪そうで。

それでいて泣きそうなんだもん。


「ね、春野香純さん?」

「ごめんなさい……その……セリ様、しーさま」


あー。

『しーさま』って言う声、ものっそいちっちゃいよ。
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