愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「イイ様だな、九条のぼっちゃま」
思いっきり背中を踏みつけたまま、香椎くんは顎を上げながら岳尚様を冷ややかに見つめていた。
「おまえたちがどんな手段を使おうが、オレはセリを守ってみせる。
やれるものならやってみるといい。
オレは容赦も妥協もしない」
「し……」
「そうそう。
これからはオレのこと『執事様』じゃなく『しーさま』と呼ぶんだな、岳尚ぼっちゃま?」
グリグリと……背中を踵で踏みつける姿はもはや『俺様』通り越して『鬼』ですよ、香椎くん。
唖然とする私はもうお口が開きっぱなしで、岳尚様と観覧車の中ですんごい怖かった記憶なんて吹き飛んでしまっている。
そんな私のほうに香椎くんは向き直ると手を差し伸べてにこりと笑んだ。
「さぁ、行きましょう、『お嬢様』」
さんざ私のこと『セリ』と呼び捨てしていたにもかかわらず……ここへ至っては『お嬢様』と呼ぶ。
わかんない。
この人全然わかんない。
とりあえず彼の手をとり、再び動きを止めた観覧車の外へと出てその場を後にする。
「覚えておけよっ!!
この借りは……この屈辱は何倍にもして返してやるからな!!」
そんな叫び声が聞こえたけれど……香椎くんは涼しい顔で受け流すだけで後ろを振り返ることはなかった。