愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

「香椎くんは……香椎くんじゃないの?」


今目の前にいる香椎毅臣というこの人が。

本当は何を考えていて。
何を思っていて。
どうしたくて。
どうなりたくて。

こんなことを言っているのか。

その奥の奥のことなんて。

私には全然分からない。


香椎くんと一緒に過ごすようになって、そんなに時間が経っているわけじゃない。


けど。

それだけど。


香椎くんは香椎くんで。


何を隠していても。


私はきっと……


「そうだね。

オレは……キミの前ではただの『香椎くん』だったね」


どうしてそんなふうに淋しそうに笑ってしまうの?


スッと身を引いて、香椎くんは何もなかったかのようにクルリと背を向けた。


「香椎くんッ!!」


その身の代わりの速さに、不安と切なさがどうしようもなく入り混じる。


私、悪い事言った?

香椎くんを失望させた?


「はい、お嬢様?」


クルッと顔だけ向けた香椎くんの顔はもういつもの執事の顔で……違う意味で私の心臓が殺される。
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