愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
校内の敷地のはずれにある温室の扉を開き、そこに来てやっと彼の腕を離す。
振り返れないまま、大きく深呼吸した後。
「私、香椎くんのこと信じるから」
クルッと向き直ってそうはっきり告げる。
私の視線よりももっと上にある香椎くんの瞳が一度大きく見開いて。
鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔になって。
でも、その顔はややぁってかんじにすぐに柔和なものになって。
「だと思った」
そう言って、茶化すように笑う香椎くんの笑顔はこの上もないくらい優しさに満ちていて。
やだやだやだやだ!!
ちょっとこんなとこでその笑顔にその言葉使いは反則じゃないのッ!?
ドキンッって。
死ぬほどトキメイテル。
「秘宝って、本当は大したもんじゃないんでしょ?」
エヘン。
一つ咳払いした後で、私はそう切り出した。
そんな私に香椎くんは
「見た目はそうかもしれないね」
そう答えるから、ああ、なんかやっぱりビンゴなんだなってそう思う。
「でも、とっても価値があるものなんだよ」
香椎くんはそう言うと。
「少なくとも、『九条』と『紫丞』の両家にとってはね」
苦笑いを浮かべながら、呟くように続けた。