愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「どうして『九条』と『紫丞』の両家にはそれが必要なの?」
「昔からの『因縁』ってやつかな?」
コリコリと頭を掻くなんて、『らしく』ない仕草まで見せながら、香椎くんは小さなため息を漏らした。
「綾渡家に伝わる秘宝を手にしたものが、その時代を制する力を手にするってね。
むか~し、昔、大昔から伝えられ続けてるんだよ、両家にね」
「大昔って……そんなの私知らないし」
そう言う私に香椎くんは「当たり前」と答えた。
「だって、キミはまだ綾渡の当主様ではないんだから。
当主になるための儀式の時に、本来はこのことは伝えられるものなんだよ。
さらに言うなら、キミのおばあさまが『秘宝を失くしたから、そんな習わしは知らない』なんてことを言っちゃったから、両家の『秘宝争奪戦』がややこしくなったんだよ」
「なんでそんなことをおばあさまが……?」
失くしたなんてウソをどうしてつく必要があったんだろう?
だって、秘宝がこれだとするなら。
秘宝は私が持ってるってことになるんだし。
「キミを守りたかったんだと思う。
キミのお母さんを守れなかったから、どうしてもキミだけは守りたかったんだと思うよ」
笑うのをやめて、香椎くんは苦い顔を私に向けた。
「お母さんを守れなかったって……!?」
ドクン。
ドクン。
心臓の鼓動が奇妙なほど大きな音を立て始める。
「キミのお母さんは両家の手によって暗殺された……からね」
聞いた瞬間、目の前が真っ白になるような感覚に襲われた。