愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

「その碁石を……オレに預けて」


約束を今度こそ果たすから――!!


そう続けて香椎くんは差し出した手をさらに私の方に近づけた。


「信じるって言ったのは……私だもんね」


真っ白な濁りのない小さな石一つ。

こんなものを取り合っている『九条』も『紫丞』も知らない。

ただ、信じる人に今は自分の大切なものを預けるだけ。


「やっぱりただの碁石なんだよね?」

「そうだね、碁石だね。
でも、遥か昔の御先祖様は、これでこの国を変えたこともあったんだよ」

「よくわからない話すぎ」

「知らなくていい。

キミは権力も金も興味ないでしょう?」


権力も金も興味はない。

ほんと、そのとおり。

だって、小さい頃からまわりはそれしか興味がなかった。

権力と金のある『綾渡家』の『娘』としての私しか見てなかったから。


だから、権力も金も大嫌いで。
今も昔もそれは何一つ変わらない。

だから、お嬢様でいることも。
お嬢様のフリをしている自分も。
お嬢様としての自分しか必要でない人も。


私は嫌い。


「セリ」


首から碁石のペンダントをはずそうとする私に、香椎くんの声が耳を打った。


「オレにとって秘宝は『セリ』自身だから」


そう言う香椎くんの瞳に私は身じろぎ一つ出来ず――!!





< 146 / 282 >

この作品をシェア

pagetop