愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「その碁石を……オレに預けて」
約束を今度こそ果たすから――!!
そう続けて香椎くんは差し出した手をさらに私の方に近づけた。
「信じるって言ったのは……私だもんね」
真っ白な濁りのない小さな石一つ。
こんなものを取り合っている『九条』も『紫丞』も知らない。
ただ、信じる人に今は自分の大切なものを預けるだけ。
「やっぱりただの碁石なんだよね?」
「そうだね、碁石だね。
でも、遥か昔の御先祖様は、これでこの国を変えたこともあったんだよ」
「よくわからない話すぎ」
「知らなくていい。
キミは権力も金も興味ないでしょう?」
権力も金も興味はない。
ほんと、そのとおり。
だって、小さい頃からまわりはそれしか興味がなかった。
権力と金のある『綾渡家』の『娘』としての私しか見てなかったから。
だから、権力も金も大嫌いで。
今も昔もそれは何一つ変わらない。
だから、お嬢様でいることも。
お嬢様のフリをしている自分も。
お嬢様としての自分しか必要でない人も。
私は嫌い。
「セリ」
首から碁石のペンダントをはずそうとする私に、香椎くんの声が耳を打った。
「オレにとって秘宝は『セリ』自身だから」
そう言う香椎くんの瞳に私は身じろぎ一つ出来ず――!!