愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
伸びてくる香椎くんの腕。
伸びてくる香椎くんの指先。
その手が私の手に触れて、ペンダントの金具を外す。
白い石は小さく揺れながら、私の胸元から徐々に離れて行く。
けれど……その石は香椎くんの手の中ではなく。
本当にスルリと……滑り落ちるように地面へと落下した。
「……逃げろ……セリ……」
香椎くんの微かな声が耳元に迫る。
揺らいだのは香椎くんの身体で……私のほうへと倒れてくる彼を抱きとめる。
なにがあったのか。
なにが起きたのか。
まったくわからないのに一つだけ。
確実に私に伝わったのは、ぬるりとした生温かな感触と目を覆うような光景だった。
「香椎くんッ!!」
支えた彼の背に深く、深く。
ボウガンの矢が刺さっていて、そこから血が滲み始めていた。
「御苦労さま」
背後で声がしたのはその刹那で。
振り返ったその先にいたのは――
「あなたの役目はそこまでです」
見たこともないような冷徹な顔をした香純さんだった。