愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

ゆっくりと振り返る。

香椎くんが……紫丞現当主の執事?


「ほんと……なの?」


それが本当ならば、香椎くんが私の執事になったのはなぜ?

私を守るためとか言いながら、本当は紫丞の家のために動いていただけなの?


「香椎くん……?」


香椎くんは答えなかった。

ただじっと見つめ返すだけで「YES」とも「NO」とも答えなかった。


「本当よ。
その男は現当主の命令であなたに近づいたの」

「香純ッ!!」

「私を知っていることがなによりの証拠だと思わない?」


香純さんの声だけが私の耳を打っていた。

確かに言う通りだ。

香椎くんは香純さんを知っていた。

病院での威圧的な態度もおかしいとは思っていた。

けど、これで合点がいく。


紫丞の家の人間同士だったから。

だからその場では私に事実を隠したんだ。


香椎くんの足元に転がる輝く白い石。

それが目に入って、そっと拾い上げた。

そしてそれを香椎くんの目の前に差しだして見せ「これなの?」と尋ねた。


「これが目的?」


違うって言ってほしい。

これを手に入れるために私に近づいたなんて思いたくない。

今までの香椎くんの全てを否定したくないから。

だから……ちゃんと答えてほしいと思った。
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