愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

香椎くんはじっと私の目を見つめ返すだけで答えは言わない。

このことに対しても、彼は否定も肯定もしないということらしい。

ギュッと石を握りしめる。

冷たいけれど、滑らかな感触が確かに手の中で存在をアピールしている。


「綾渡セリ、それをこちらに渡しなさい」


高飛車な声が降り注ぐ。

顔を痛みでゆがめた香椎くんはダメだというように小さく首を振って見せた。

なにを信じて。
なにを信じなければいいのか。

誰を信じて。
誰を信じてはいけないのか。

さっきまで香椎くんを心から信じていた。

けど……私は本当に香椎くんを信じていいのか分からない。

香椎くんが誰であっても。
なにを隠していようとも。

どんな考えで。
誰の命令で。

私に近づいてきたとしても。

香椎くんは香椎くんじゃないの?


そう思うのに――


迷って。
戸惑って。
躊躇する私がいる。


裏切り。


そうじゃないと言葉で否定しても、現実が目の前に迫るこの状況で冷静さなんてものはすでに失っている。


でも……


ゆっくりともう一度、香純さんの方に向き直る。


ボウガンの矢の先が鈍い光を放っている。
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