愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「これがそんなに大事なの?」
香純さんは「勿論よ」と答えた。
「それがあれば、天下は紫丞の家のものですもの」
『天下』?
バカな事を言ってると思う。
今の時代で『天下』?
戦国時代でもないのに天下だなんて。
「バカみたい」
「なにも知らないあなたには、それがどれほど価値のあるものなのか分かるはずもないわ」
ふんっ。
鼻先で私をせせら笑うように香純さんは笑った。
結局こうなるのかというあきらめにも似た思いが顔をもたげる。
「さぁ、寄こしなさい。
あなたには無用のものよ」
冷徹な瞳、冷徹な口調。
張り付いた氷のような顔を見た後で、私は一度小さく深呼吸した。
もう一度ギュッと手の中の石を握りしめ、小さく呟く。
「ごめん……」
それはこれを私に託してくれたお祖母ちゃんへだけど。
たぶん、これから私がすることをお祖母ちゃんだったら笑って許してくれると思う。
「なら……」
グッと目の前の女を睨みつけ、私は大きく腕を振り被る。
「自分で探しなさい!!」
勢い付けて生い茂る木々や草に向かってそれを投げ捨てた。