愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
白い石は天井から差しこむ光を反射して、キラキラ輝きながら緑深い草の中へと消えて行く。
それを確認するかしないか。
相手が「あっ」と息を飲むのを確認するかしないか。
そんな一瞬の隙をつくように私は振り返り叫んでいた。
「香椎くん!!」
右手を差し伸べて、彼を見る。
なにも言わないけれど、香椎くんはただ頷いて。
痛みを押すかのように私の手を取る。
それをグッと力いっぱい引っ張って、私は前を向き走り出す。
目指すのは出口。
香純がいる方向とは逆の非常口に向かって走り出す。
「逃がすか!!」
香純から放たれる矢が頬の横を掠めて、チリっとした痛みが走る。
けれど振り向かない。
香椎くんの手を取って、私は全力で走っていた。
今は逃げるしかない。
石なんかどうでもいい。
とりあえずこの場から逃げられればいい。
「ムチャしすぎ」
苦しそうに顔をゆがめているにも関わらず、香椎くんはそんなことを呟きながら走っていた。
「余裕あるならもっと足動かしてよ!!」
そんな必死な私の声に、香椎くんは微苦笑する。
「大丈夫、キミは守るよ」
「そんな大けがしてるのに!!」
こんな危機的状況にも関わらず、香椎くんは余裕のあるフリをする。