愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

揺れる。
揺れる。

視界が揺れる。

ぐにゃりと見慣れた風景が、マーブル模様のように溶けあって真っ黒になる。

なにも見えない。
なにも聞こえない。

真っ暗で。
真っ暗で。

どこにいるのかも分からない。

這い上るのは恐怖と不安。

膝を抱えて、じっとする。


「助けて」


小さな声は暗闇に吸い込まれてかき消える。


「助けてお兄ちゃん……」


怖くて、怖くて。

私はそう呟いていた。

涙なんか流し過ぎてもう出てこない。


「お兄ちゃん……」


真っ暗な視界に浮かぶのはたった一人の人物。

だけど……その人物の顔はもやがかかったかのように見えていない。


それでも私は呟き続けていた。


「お兄ちゃん」


そう何度も。
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