愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「これがなんだか分かるよね?」
ちらり、ちらりと揺らして見せるその手の中の白い石に、私はごくりと息を飲み込んだ。
分かるどころの話じゃない。
あれは元々私のものだった物。
香椎くんを助けるために、投げ捨てた『秘石』と呼ばれた碁石のペンダント。
「これを賭けて4回。
これは大きなチャンスになると思わない?」
イタズラっ子のように瞳をクルクルさせながら、岳尚はくすりと小馬鹿にでもするように笑った。
『否』
という拒否権は認めない。
そう言うように私と紫丞孝明を交互に見比べる。
目の前の紫丞孝明の表情からはどう思っているのかは読みとれない。
けれど、彼は静かに「いいだろう」と答えを返した。
「キミは?」
異存ないよね?
そう問いたげに小首を傾げながら言う岳尚に心底ムカッ腹が立つ。
でもそれを表には出さず、あくまでも冷静に答えて見せた。
「どうぞお好きに」
「イイ度胸だね。
でも……」
一拍置いて。
またニヤリと笑みを浮かべて。
「その強気もいつまで続くかな?」
キミはもうすぐ手の内になるんだよと言いたげなその笑みに、反吐が出る。
「さぁ、試合を始めよう」
パチン。
再び、岳尚の右手の指が大きな音を立てる。