愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

胸がドクドクと血を全身に廻らせていく。

暗闇でよかったと思う。

額にじんわりと浮かぶ汗もなにもかも、この暗がりではきっとほかの人には分からないはずだ。

焦っているとか。
困惑しているとか。

そんな弱っているところを見せてしまえば相手の思うつぼだもの。


「じゃ、ボクは二枚。紫丞の御当主はどうするの?」


岳尚がにやりと笑み、紫丞孝明を見てそう言った。

彼はじっとカードを見ている。

そして静かに「一枚」と言った。


「それにしても、紫丞の御当主自らお越しいただけるとは思いもしなかったよ」


カードをその場に伏せ、岳尚がそう切り出した。


「ボクはてっきり、あっちの執事くんが代理で来るとばかり思っていたからねぇ」


続けて紫丞孝明もカードを伏せた。

けれど、岳尚の話には何一つ返事をしない。


「病弱で表舞台には姿を現したことがない謎に包まれた紫丞の当主が、のこのこ敵地においで下さるとは……こちらとしてもありがたいよ」


ゾクリと背筋に悪寒が走るほど、低く、そして殺意とでもいうのか。

そんな悪意が籠った口調で岳尚は言った。

私はカードを伏せながら、指先が僅かに震えるのを必死に力を込め隠そうとしていた。


ディーラーから配られたカードが私の目の前でオープンされた形でそこにある。


来た数字は『3』だった。


望み通り『3』だった。


『ストレート』


なのに……どうしてこんなに不安が襲う?
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