愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「さぁ、時間も惜しいから次のゲームに行こうか?」
勝った岳尚はにやにやと笑みを崩さずにそう告げる。
「それにしても早々勝負を降りるとは、紫丞は潔いね」
そう言って笑う岳尚に、紫丞孝明本人はゆっくりと瞳を開き私をあえて見て言った。
「ここではむしろ負けが必定でしょうから」
その言葉に胸を鷲掴みにされる思いに駆られた。
そうだった。
そうだった。
ここは九条のテリトリー。
このゲームだって九条の支配下にある。
私たちが万に一つ勝てる可能性すらないような状況下で、あえて勝負に来ていることを忘れていた。
「嫌な言い方をするね」
会話が進む中でカードが再び切られ、配られて行く。
「負けるゲームをわざわざするために来たなんて、紫丞の御当主様も相当お暇だね」
「……残念ながら、負けるつもりはありませんよ」
そう言ってカードを手にする孝明は、本当になにを考えているのか読めないほどに冷静で。
感情というものを表に出さない。
なんていうか……香椎くんとは正反対だなと思ってしまう。
だから香椎くんみたいな執事がこの人についていたんだろうか?
「勝ってからその台詞は改めて聞いてあげるよ」
鼻先で孝明の言葉を一蹴し、岳尚もカードを手にした。
私も同じようにまたカードを手に取る。