愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

この暗闇の空間で、ディーラーの姿は見えない。

岳尚が手元でカードを擦り変えているということもないように見える。

だからやっぱりディーラーから配られるカード自体が『いかさま』なんだろう。

そうでなければ辻褄が合わない。

このゲームもおそらく勝てない。

ゲーム自体が勝てないのだとしたら……孝明はどうするつもりか。

ゲームに自分の人生を賭けるというよりも、今はむしろ彼にそれを委ねるしかないような気がする。


相手が香椎くんだったなら、きっとこんな迷いが生まれることはないんだろうけれど。


でも、そこにいるのは香椎くんが執事として仕えている主人である人であって、彼本人じゃない。

ギュッと胸元を握る。

香椎くん。
香椎くん。
香椎くん。


配られたカードを見た瞬間、真っ暗になる。

もう、どうしていいか分からない。

対照的に岳尚はカードを見てこう言った。


「秘石を得たものが全てを得る」


勝負するか?
しないか?

しても勝てないのに、それでもあがくか?


「さぁ、どうする?」


香椎くんだったらどうする?


「最後まであきらめてはいけませんよ」


孝明の言葉にハッとさせられ、唾を飲み込む。


「5枚全て変えてください」


パッと。

本当に潔いという言葉が当てはまるくらい、なんの躊躇もなく全てのカードを切り捨てた孝明は小さくほほ笑んでいた。


まるで勝利への確信があるかのように――!!

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