愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

立ったまま動けずにいる岳尚に向かって、香椎くんはどうぞというように椅子を示して見せた。

転がっている椅子を香椎くんの執事という彼が起こし、元の位置に戻す。

悔しそうに顔をゆがめながら、それでももう一度冷静さを取り戻した岳尚は香椎くんを睨みつけながら「勝てる気でいるんだな」と吐き捨てるように言った。


「もちろん。
例え、おまえが『いかさま』をしようがね」


その瞬間、岳尚の顔がカッと赤くなった。


「なんだと!?」

「さっきから信号機みたいだよ、岳尚くん」


香椎くんはそう言ってクスクス、クスクス笑った。

さっきとは完全に立場が逆転してしまっていることに、さらに岳尚は逆上した。


「言ってみろよ!!
オレがどんな手を使ったか、言ってみろよ!!」


分かるわけがないとでもいいたげに、小馬鹿にしたような顔で言う岳尚に。

でも香椎くんはまったく相手にもしない涼しい顔で「よく考えたよ」と答えた。


「頭の悪いおまえにしてはよく考えた茶番だったね。

部屋を暗くし、ディーラーの手元を見えないようにしたのは傑作だった。

だからオレは言っておいたんだ。

『負けることは必定』勝負にはならないから頑張らなくていいと……ね」


って。

さっきの言葉って香椎くんの言葉だったって言うの!?


しかも頑張らなくていいって。

私、頑張っちゃったじゃん。


「ただ……」


ただ?


「時間稼ぎはして欲しいとは頼んだんだよ。

いろいろやることがあったからね」


そう言って香椎くんは私を見つめ


「彼女はよく頑張ってくれたよ、オレのためにね」
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