愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

そんなに熱っぽい目で見つめられても……ドキドキして思わず目を逸らしてしまう。

って。

別に香椎くんのために時間を稼いだわけでもないし。

確かに香椎くんを想っていなかったわけじゃないけど。

でも、誤解って言えば誤解だし。

ここは訂正したほうがいいんだろうけど。


「……綾渡も揃ってこのオレを貶めようとしていたとはね。

意外としたたかな女だったってわけだ」


岳尚は香椎くんのその言葉で。

ううん。

きっと否定しなかった私のせいで完全に冷めきった状態になったらしく。

ゆっくりと示されていた席へと腰を下ろした。


「で?
いかさまと分かってて、あんたは勝負しようって言うんだよな?」


腕を組み。
足を組み。

大柄な態度で香椎くんと私を交互に見つめながら岳尚はそう言った。


「賭けるものがないんじゃないの?
『財産』も『家名』も『己自身』も『秘石』も。
今となってはオレら『九条』のものなんだよ?」


なにを賭ける気でいるのさと……さも言いたげな岳尚に、しかし香椎くんはまたしても余裕の笑みを浮かべて見せた。


「なにがおかしい?」


そう問う岳尚に香椎くんは「失礼」とコホンと咳払いし「賭けるものはあるさ」と続けた。


「命……とでも言うのかよ?」


そんな岳尚に、香椎くんは「まさか!?」と大仰におどけて見せて


「もっといいものがある」


そう言った。


命……なんて物騒だと思ったけど、もっといいものって?
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