愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「おまえの言う通り、今の紫丞にも綾渡にも賭ける物はないよ。
物理的な物……限定にすればね」
「それなら話にならないだろ?」
「話は最後まで聞けよ、岳尚。
オレは物理的なものって言ったんだぜ?」
ニヤリ。
香椎くんはそこまで言うと「だからさ」と続けた。
「オレの『運』を賭ける」
そう言う香椎くんに岳尚は「は?」とまるで聞こえなかったとでも言うようにわざとらしく聞き返して見せた。
「『運』だと?
バカバカしい。そんなもの……」
「そうだな、『いかさま』のゲームで『運』を賭けるなんざ、バカの言うことかもしれないなぁ」
香椎くんは自分で言っておきながら、クツクツ喉を鳴らして笑ってる。
っていうか……香椎くん、なんか血迷った?
そこまで分かってて、それでも勝てる自信があるの!?
「オレの『運』がおまえの『いかさま』に勝てるかどうか。
おまえ自身がその目で確かめたらいい。
それでオレが『万が一負ける』ことがあれば、そのときはおまえの好きにするがいいさ」
揺るがない自信。
揺るがない瞳。
揺るがない決意。
それが香椎くんから溢れ出ていた。
だから飲まれる。
それは私だけじゃなく、そこにいる全ての人間がそうなっていた。
ちらりと岳尚を盗み見る。
額にうっすら汗が浮かんで見える。
香椎くんの目に見えない圧力に、彼は押されているんだ。
そう感じる。