愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

「どうするんだ、岳尚?
このまま尻尾巻いて逃げてもいいぜ。

その代わり、おまえのそのチキンぶり。
尾ひれをたっぷりつけて振れ回わさせてもらうけど?」


それで『九条』の『当主』として坐していられるのならどうぞとでも言いたげに。

本当にイジワルで、当人でない私ですら胸が苦しくなるくらい嫌な言い方をして見せる香椎くんに……なんだか不謹慎なくらい、私はゾクゾクしていた。


「ブッ潰してやるよ、あんたのその自信!!」


プライドを傷つけられた……そんな岳尚がディーラーに配れと言うように合図をした。

30手前くらいの若いディーラーは、静かにただカードを配って行く。


5枚のカードがそれぞれの目の前に配られる。

岳尚はそのカードを手に取った。

それなのに……


「なんのつもりだ!?」


香椎くんは両手を右ひざの上で組んだまま、カードを取ろうとはしなかった。

だから出た岳尚の言葉に、香椎くんは「なにが?」と返した。


「カードを見ないつもりか!?」


そう言う岳尚に、香椎くんは「YES」と返事をした。


「人をバカにするのも大概にしておけよ、紫丞!!」

「オレはオレの『運』を賭けると言ったのを、おまえは聞いてなかったのか?」


静かに。

刺すように鋭い冷たい瞳で香椎くんは岳尚を見つめながらそう言った。


「オレはカードを『見る』つもりも『変える』つもりもない。

このまま勝負する」


ちょちょちょちょちょっと!!

香椎くん、本気!?


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