愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

めくられた目の前のカードに釘付けになった。

思わず口から飛び出そうになった声を両手で押し込める。


「オレの勝ちだ」


ニヤリと笑った香椎くんの手の下にあったのは紛れもなく『A』。

『スペード』の『A』がそこにあった。


そう、香椎くんは揃えたんだ。

ううん、引き当てた。

本当に宣言通り、『ロイヤルストレートフラッシュ』というとんでもない役を引き当てた。


目の前で起こったことが信じられない。

嬉しさと。
感激と。
なんかわかんないけど、こみ上げる興奮に涙がこぼれる。


「……あり得ない」


呟いたのは岳尚だった。


「こんなこと認めない」


ガクガクと震えるのは声だった。

まざまざと目の前で見せつけられて、信じられないでいるのはなにも私だけじゃない。

私よりももっと愕然とする岳尚は、テーブルの上のカードを手で乱暴に払いのけた。


「こんなことはあり得ない!!
『いかさま』だ!! 
『いかさま』をしたんだ、あんたはッ!!」


怒鳴るようにそう言った岳尚は香椎くんの胸倉をつかみ上げてそう吐いた。

そんな岳尚の手をゆっくりと静かに香椎くんは掴み返した。


「往生際が悪すぎるぞ、九条」


ビリビリとその場の空気が震えるほど、低くドスのきいた声で香椎くんは岳尚に告げた。


「『運』ってやつは『引き当てる』んじゃねぇんだよ。
『引き込む』んだよ」
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