愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

そう言って岳尚の手を振りほどくと同時に彼の胸倉をつかみ返し、そのまま壁に押し付けた。


「いいか?

オレはおまえの用意した『いかさま』ディーラーにカードを切らせたんだ。

おまえの手札だって普通なら『負けない』カードだったろ?

なのに負けたのはなぜか?
おまえは分からないだろ?」


さらに吊り上げるように香椎くんは岳尚を持ちあげた。

首が閉まって苦しそうに顔をゆがませる岳尚はその質問に答えられずにいた。

なおも香椎くんは続けた。


「おまえが負けたのは、おまえの器がオレに及ばなかった。

ただそれだけなんだよ。

当主としての器が圧倒的に足らなかった。

だから負けた。
だから裏切られた。
だから見捨てられた。

これで分かっただろう?」



畳みかけるように、香椎くんは言葉を紡いでいた。

その言葉に、香椎くんがどうしてこのゲームに勝てたのか。

それをうかがい知ることが出来た。

そう、香椎くんは『いかさま』を逆手に取ったんだ。

香椎くんが『運良く』カードを『揃えた』んじゃない。

香椎くんが岳尚の用意したディーラーに『運』を選ばせたんだ。


どちらに付くのが賢い選択かを選ばせたゆえ。


だから香椎くんは言ったんだ。


『運』を『引き当てる』んじゃなくて『引き込むんだ』って。
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